あなたの身近に迫る問題
沖縄の美しい海と空の下で、私たちの暮らしに静かに、しかし確実に忍び寄る影があります。
それは、ブランドコピー商品や海賊版、偽物といった「知的財産侵害物品」の存在です。
沖縄地区税関が2024年に差し止めた偽ブランド品などの点数は、
過去5年間で最多となる2,700点以上に達し、前年と比べて実に2.7倍にも急増しました。
これは、遠いどこかの話ではありません。
インターネットを通じて、スマートフォンを数回タップするだけで、
誰もがこの問題の当事者になり得る時代です。
「安いから」「自分用だから大丈夫」といった安易な気持ちが、
予期せぬ深刻なリスクを招くことがあります。
単に金銭的な損失にとどまらず、あなたの健康を害し、知らないうちに犯罪組織に加担し、
そして法的な罰則を受ける可能性もあるのです。
6月のJMPコラムは、沖縄県にお住まいの皆様が、巧妙化する偽ブランド品販売の手口を理解し、
その危険からご自身と大切な家族を守るための留意点をまとめました。
なぜ今、沖縄が狙われているのか。その手口はどれほど巧妙なのか。
そして、私たちはどうすればこのデジタル時代の罠から身を守れるのか。
これから、その現実をご説明いたします。
沖縄で急増する偽ブランド品の水際摘発
データは明らかに示しています。
沖縄における偽ブランド品などの流入は、
もはや「憂慮すべき事態」から「危機的状況」へと移行しつつあります。
沖縄地区税関が発表した最新の統計は、その深刻さを明確に示しています。
数字が示す沖縄の現状
沖縄地区税関が発表した「令和6年 知的財産侵害物品の差止状況」によると、
2024年(令和6年)の1年間で、税関が輸入を差し止めた知的財産侵害物品の状況は以下の通りです。
差止点数: 2,710点。これは前年比で2.7倍という爆発的な増加であり、過去5年間で最多の記録です。
差止件数: 184件。こちらも3年連続で増加しており、問題が継続的かつ拡大傾向にあることを示しています。
この急増は沖縄だけの現象ではありません。
全国的に見ても、2024年の税関における知的財産侵害物品の差止件数は過去最多を更新し、
差止点数も大幅に増加しています。
日本全体が標的とされている中で、特に沖縄での増加率が際立っていることは、
何らかの理由で狙われやすくなっている可能性を示唆しています。
変化する供給元:新たなホットスポットの出現
かつて偽ブランド品の供給元といえば、特定の国がその大半を占めていました。
しかし、最新のデータは、その構造が大きく変化していることが分かります。
中国: 依然として差止「件数」では最大の供給元であり、全体の58.7%を占めています。
これは長年の傾向であり、全国的な状況とも一致します。
ベトナム: 最も注目すべきはベトナムからの流入の激増です。
差止件数では全体の19.0%を占める第2位に浮上。
前年比で件数は3.9倍、点数は実に9.7倍にも達しており、
新たな主要供給ルートとして確立されつつあることがうかがえます。
タイ: 差止「点数」で見ると、タイが1,230点(全体の45.4%)と突如トップに躍り出ました。
これは特定の品目の大量流入によるもので、後述する密輸手口の巧妙化を物語っています。
韓国: 少数ながらも、継続的に偽ブランド品の供給元として名を連ねています。
この供給元の多様化は、犯罪ネットワークがグローバルに広がり、
より摘発されにくいルートを常に模索していることが推測できます。
押収品カタログ:バッグや衣類だけではない危険な品々
「偽ブランド品」と聞くと、多くの人がバッグや衣類、時計等を思い浮かべるかもしれません。
しかし、ここ数年の傾向は変化しているようです。
定番品: 差止「件数」の上位を占めるのは、依然として衣類、靴類、バッグ類です。
これら3品目で全体の72.6%を占め、8年連続で上位を維持しています。
新たな主役: 一方、差止「点数」で最多となったのは「バッグ類付属品」で、1,200点以上が押収されました。これは、完成品ではなく部品として密輸する新たな手口が横行しているということが伺えます。
最も危険な偽物: 最も警戒すべきは、消費者の健康に直接的な危害を及ぼす可能性のある「医薬品」や「化粧品」の差押えが続いている点です。これらは安易な使用が深刻な健康被害につながる、極めて悪質な模倣品です。
全国的には、電子たばこ関連商品の差押えも急増しており、注意が必要です。
表1.1: 沖縄地区税関における知的財産侵害物品の差止実績推移(令和2年~令和6年)
年度 | 総差止件数 | 総差止点数 | 仕出国別件数 上位3カ国(構成比) | 仕出国別点数 上位3カ国(構成比) | 品目別件数 上位3品目(構成比) | 品目別点数 上位3品目(構成比) |
令和2年 (2020) | 255件 | 1,997点 | 1. 中国 (89%) | – | 1. バッグ類, 2. 衣類, 3. 靴類 | 1. 衣類 (118点) |
令和3年 (2021) | 増加 | 増加 | – | – | 1. 衣類, 2. 靴類, 3. バッグ類 | – |
令和4年 (2022) | 増加 | 増加 | – | – | 1. 衣類, 2. 靴類, 3. バッグ類 | – |
令和5年 (2023) | 129件 | 1,002点 | 1. 中国, 2. ベトナム, 3. 韓国 | 1. 中国, 2. 韓国, 3. ベトナム | 1. 衣類, 2. 靴類, 3. バッグ類 | 1. 衣類, 2. バッグ類, 3. 靴類 |
令和6年 (2024) | 184件 | 2,710点 | 1. 中国 (58.7%), 2. ベトナム (19.0%), 3. 韓国 (5.4%) | 1. タイ (45.4%), 2. 中国 (27.6%), 3. ベトナム (9.0%) | 1. 衣類 (36.3%), 2. 靴類 (21.5%), 3. バッグ類 (14.8%) | 1. バッグ類付属品 (45.5%), 2. 衣類 (20.4%), 3. 運動用具 (8.3%) |
※沖縄地区税関資料より引用
この表は、沖縄に流入する偽ブランド品が、量、供給元、品目のすべてにおいて、近年いかに劇的に変化し、多様化・巧妙化しているかを一目で示しています。
「沖縄コネクション」:なぜ今、沖縄が狙われるのか?
全国的に偽ブランド品の流入が増加する中で、なぜ沖縄が特に顕著な伸びを示しているのでしょうか。
その背景には、沖縄の地理的、社会的、経済的な特殊性が複雑に絡み合っています。
統計データの裏側を読み解くと、犯罪組織による巧妙な動きが見えてきます。
国際郵便パイプライン : 100%ダイレクトに消費者を狙う手口
沖縄地区税関の摘発データが示す最も衝撃的な事実の一つは、
2024年に差し止められた知的財産侵害物品の輸送形態が、
100%「国際郵便物」であったことです。
全国の統計では、コンテナなどで運ばれる一般貨物も一定の割合を占めているのに対し 、
沖縄では完全に個人間の荷物を装った手口に特化しています。
これは、密輸手口が「ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)」モデルへと
完全に移行したことを意味しています。
犯罪組織にとって、この手口には複数の利点があります。
- リスクの分散: 大量の偽物を一度にコンテナで送るのではなく、
小さな小包に分けて多数発送することで、万が一ひとつが摘発されても損失を最小限に抑えられます。 - 匿名性の確保: 伝統的な輸入業者を介さず、海外の発送元から日本の購入者の自宅へ直接送られるため、
組織の中枢が摘発されにくくなります。 - 消費行動との合致: インターネットで商品を購入し、自宅に届くのを待つという
現代の消費者の行動パターンに完全に合致しており、
購入者に罪の意識を抱かせにくい構造になっています。
この結果、水際対策の最前線は、港のコンテナヤードから、
国際郵便局のX線検査装置 、
そして私たち一人ひとりのパソコンやスマートフォンの画面へとシフトしています。
ベトナム-沖縄:友好関係の陰で悪用されてしまうルート
ベトナムからの偽ブランド品流入が爆発的に増加している背景には、
沖縄とベトナムの間に築かれてきた良好な関係性が逆手に取られているという
残念ながら皮肉な現実があります。
沖縄県内には、ネパールに次いでベトナム出身の外国人労働者や留学生が多数在住しており、
その数は増加傾向にあります。
また、沖縄とベトナムは、経済、文化、学術の各分野で
長年にわたり官民一体となった活発な交流を続けてきました。
これにより、両地域を結ぶ人的・物的交流のインフラ、特にEMS(国際スピード郵便)などの
物流網が非常に発達しています。
犯罪組織は、この正規の交流が活発な状況を隠れ蓑にしている事も考えられます。
日々大量に往来する正当な郵便物に偽ブランド品を紛れ込ませることで、
税関の監視の目をかいくぐろうとしているのです。
さらに深刻なのは、県内に住む留学生などが、高収入を謳う「闇バイト」として、
商品の受け取りや国内での再発送、代金の受け取り役(いわゆる「出し子」や「受け子」)として
利用されるケースが全国的に報告されていることです。
これは、沖縄のベトナム人コミュニティが決して犯罪の温床なのではなく、
むしろその健全な発展が犯罪者に悪用されているという構造的な問題です。
ベトナム政府自身も国内の模倣品対策に力を入れていることからも、
問題の複雑さがうかがえます。
タイからの異変と「部品化」する偽ブランド品
2024年の統計で、タイが差止「点数」でトップになった事実は、
密輸手口のさらなる巧妙化を示唆しています。
その大半を占めたのが「バッグ類付属品」であったことが、その鍵を握ります。
なぜ完成品のバッグではなく、
ロゴプレートやタグ、金具といった「付属品」だけを大量に送るのでしょうか。
ここには、税関検査を回避するための計算された手口が見て取れます。
- 発見の困難さ: 完成品の偽ブランドバッグはX線検査でも形状から判別しやすいですが、
小さな金属部品や布タグは、他の荷物と区別がつきにくく、見過ごされる可能性が高まります。 - リスクの低減: ロゴが入っていない「無地のバッグ本体」と、
ブランドを示す「付属品」を、別々の国から、あるいは別々のタイミングで発送します。
仮に片方が差し止められても、もう片方は手元に残るため、損失を限定できます。 - 国内での最終組み立て: 日本国内に送り込まれた「無地の本体」と「付属品」を、
最終的に国内で組み立てて完成品にします。
この最終工程を担うのが、前述の「闇バイト」である可能性も指摘されています。
この「部品化(コンポーネント化)」は、日本の特許庁も警戒する手口であり 、
単なる個人輸入を装ったD2Cモデルよりも、
さらに組織化された国内ネットワークの存在をうかがわせるものです。
沖縄独自の消費環境
これらの供給側の要因に加え、沖縄の独特な消費環境も、偽ブランド品市場の温床となり得る側面を持っています。
ブランドへの高い意識: 長年の米軍基地の存在は、
沖縄にアメリカンスタイルの消費文化を根付かせました。
県民は海外ブランドへの関心が高く、親しみを持っています。
こうした意識が、一方で「本物に近いものを安く手に入れたい」という
欲求を生み出す土壌にも影響しているように感じられます。
経済的な要因: 県経済は成長しているものの、可処分所得の水準によっては、
消費者が高価な正規品の購入をためらい、
安価な模倣品に魅力を感じてしまうケースも考えられますね…。
これらの要因が複合的に絡み合い、
沖縄が偽ブランド品の新たなターゲットとして狙われる背景を形成しているのかもしれません。
第デジタルの罠:偽物はこうしてあなたの元へ届く
今日の偽ブランド品取引の主戦場は、インターネット空間です。犯罪者は、消費者の心理を巧みに操り、洗練されたデジタルの罠を仕掛けてきます。その手口を知ることは、自衛の第一歩です。
偽ショッピングサイトの見分け方
一見、正規のオンラインストアのように見えても、
細部に注意を払えば多くの偽サイトは見破ることができます。
消費者庁や警察などが注意喚起するポイントは以下の通りです。
不自然な日本語: 「てにをは」がおかしい、奇妙な漢字が使われている、
機械翻訳のような不自然な文章が多用されている。
極端な割引率: 「全品90% OFF」「本日限定セール」など、
常識では考えられないほどの値引きを謳っている。
限定的な支払い方法: クレジットカードが使えず、銀行振込しか選択できない。
特に、振込先が法人口座ではなく、個人名義の口座である場合は極めて危険です。
不審な連絡先・会社概要: 会社の住所が記載されていない、
あるいは検索すると存在しない住所や無関係の建物が表示される。
電話番号の記載がなく、連絡手段がメールフォームのみ。
怪しいURL: 正規ブランドのURLに、不要な単語やハイフンが追加されていたり、
ドメインが「.xyz」や「.top」など見慣れないものであったりする。
これらの危険信号に一つでも気づいたら、そのサイトでの購入は絶対に見送るべきです。
SNSとAIが仕掛ける新たな騙しの手口
近年、犯行の入り口として急増しているのが、
InstagramやFacebook、TikTokといったSNSです。
ソーシャルコマース詐欺: 魅力的な商品の写真や動画を投稿し、
ダイレクトメッセージ(DM)で販売を持ちかけたり、偽サイトへ誘導したりします。
公式アカウントを装った偽アカウントも多数存在します。
AIによる巧妙な詐欺広告: 最も警戒すべき新たな脅威は、AI(人工知能)を活用した手口です。
実在の有名人やインフルエンサーの動画や音声を無断で使用し、
あたかも本人が商品を推薦しているかのようなディープフェイク動画広告を作成し、
SNSで拡散させます。
昨今これらは非常に精巧で、本物と見分けるのが困難な場合があります。
フィッシングと個人情報窃盗: これらの偽サイトの目的は、
商品の代金をだまし取ることだけではありません。
購入手続きの際に入力した氏名、住所、電話番号、
そしてクレジットカード情報などの個人情報を盗み出すことも大きな目的です。
盗まれた情報は、別の犯罪に悪用されたり、
ダークウェブ(特殊な手法でしか入れないweb領域)で売買されたりする危険があります。
犯罪の末端を担わされる若者たち
海外に拠点を置く犯罪組織が、日本の消費者に直接商品を届ける上で、
一つの大きな壁があります。
それは、国内での商品の再発送や代金の回収、そして身元の隠蔽です。
この「最後のピース」を埋めるのが、「闇バイト」と呼ばれる存在です。
SNSなどで「高収入」「簡単作業」「在宅OK」といった
甘い言葉で募集されるこの「バイト」の実態は、
犯罪組織の末端作業員(手先)になることです 。警察もこの手口への警戒を強めています。
その手口は、以下のような流れが典型的です。
- 勧誘: SNSで「荷物の受け取り・発送代行で月収20~30万円」などと謳い、応募者を募る。
- 役割: 応募者は、海外から送られてくる国際郵便(偽ブランド品やその部品)を自宅で受け取る。
- 作業: 指示に従い、商品を国内の購入者へ再梱包して発送する。
場合によっては、前述の「部品化」された偽物の最終的な組み立て作業をさせられることもある。 - 送金: 商品の代金は、応募者個人の銀行口座に振り込ませる。
そして、そのお金を指示された口座(多くは海外の口座や暗号資産)に送金させる。
この仕組みにより、犯罪組織の首謀者は自らの身元を明かすことなく、
日本国内での販売網を構築し、利益を安全に回収できるのです。
応募した側は、知らなかったでは済まされません。
犯罪に加担したとして、厳しい法的処罰の対象となります。
特に、県内に在住する若者や外国人留学生が、
経済的な困窮や社会経験の乏しさから、
こうした罠に陥りやすい傾向があり、最大限の注意が必要です。
偽物を手にする本当の代償:3つの深刻なリスク
「少し安くブランド品が手に入るだけ」
もしそう考えているなら、その認識は根本的に間違っています。
偽ブランド品の購入は、購入者自身、そして社会全体に対して、
計り知れない「本当の代償」を支払わせる行為なのです。
そのリスクは、法律、健康、社会倫理という3つの側面に及びます。
法的リスク:「知らなかった」では済まされないこと
偽ブランド品に関わる行為は、日本の法律で厳しく規制されています。
購入者、そして安易な気持ちで転売や「闇バイト」に関わった者には、
重い罰則が科される可能性があります。
【購入者・輸入者のリスク】
税関での没収: 海外のサイトから購入した偽ブランド品は、
知的財産を侵害する「輸入禁制品」として、
税関法に基づき水際で差し止められ、没収されます。
支払った代金が戻ってくることはなく、商品は手元に届きません。
販売目的所持の疑い: 個人的な使用目的での「購入」自体は、
現行法では直ちに処罰の対象とはなりません。
しかし、何度も繰り返し輸入したり、多数の商品を購入したりした場合、
「販売目的での所持」を疑われ、警察の捜査対象となる可能性があります。
この「販売目的の所持」は、明確な犯罪行為とみなされます。
【販売者・闇バイト加担者のリスク】
安易な小遣い稼ぎのつもりでフリマアプリに出品したり、
闇バイトに関わったりした場合、以下の重罪に問われる可能性があります。
商標法違反: 他人の登録商標を無断で使用した商品を販売、
または販売目的で所持・輸入する行為。
10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、
またはその両方が科される可能性があります。
詐欺罪: 偽物を本物と偽って販売する行為。
購入者を騙して代金を支払わせたとして、
10年以下の懲役に処される可能性があります。罰金刑はありません。
不正競争防止法違反: 広く知られたブランドのデザインなどを模倣し、
消費者に混同を生じさせる商品を販売・輸入する行為。
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
逮捕されれば、長期間の身柄拘束や厳しい取り調べを受けることになり、
人生に計り知れないダメージを受けることになります。
健康と安全へのリスク:その中身は本当に安全でしょうか?
偽ブランド品のリスクは、法的なものだけではありません。
購入者・使用者の身体、そして命を直接脅かす物理的な危険が潜んでいます。
正規の製品と異なり、偽物は安全基準を完全に無視して製造されているためです。
有害物質を含む化粧品・医薬品:
偽化粧品・美白クリーム: 国民生活センターには、
偽化粧品による健康被害の相談が急増しており、5年間で4倍近くになっています。
肌荒れ、発疹、かぶれはもちろん、
中には水銀や鉛などの有害な重金属が含まれているケースもあり、
深刻な皮膚障害やアレルギー、さらには化学熱傷(やけど)を引き起こした事例が
厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)から報告されています。
偽造医薬品: ダイエット薬、AGA治療薬、ED治療薬などの偽物は特に危険です。
有効成分が全く入っていない、あるいは逆に過剰に含まれている、
表示とは全く異なる危険な成分が混入しているなど、その中身は不明です。
服用によって、肝機能障害、うつ症状、心臓発作、低血糖による意識障害、
最悪の場合は死亡に至ったケースも報告されています。
発火・爆発の危険がある電子機器:
偽物のスマートフォン充電器やバッテリーは、安全基準を満たしていないため、
ショートによる発火や爆発の危険が常に伴います。
偽物の電子たばこ(VAPE)は、リキッドに有害な化学物質が含まれていたり、
本体のバッテリーが爆発したりする事故が海外で問題となっています。
アレルギーを引き起こすアクセサリー: 偽物のアクセサリーには、
コストを抑えるためにニッケルやカドミウム、鉛といった
安価でアレルギーを引き起こしやすい、あるいは有毒な金属が使われていることがあります。
社会的・倫理的リスク:購入者が支払ったお金は誰の手に?
偽ブランド品を一つ購入するという行為は、個人的な消費活動にとどまらず、
より大きな社会問題へとつながっています。
その購入代金は、決して正当な作り手を潤すことはありません。
組織犯罪の資金源: 国際刑事警察機構(ICPO)などの国際機関は、
偽ブランド品の密売が、麻薬取引、人身売買、テロリズムなどを行う
国際的な犯罪組織の重要な資金源になっていると警告しています。
偽物を買うことは、間接的にこれらの凶悪犯罪を支援することにつながるのです。
児童労働・強制労働への加担: 偽ブランド品の多くは、
劣悪な労働環境の「スウェットショップ(搾取工場)」で製造されています。
そこでは、安全対策もされず、不当に安い賃金で、
時には子どもたちが強制的に働かされているという現実があります。
一つの偽物を手にする背景には、
そうした非人道的な搾取が存在する可能性が高いのです。
偽物を買うという選択は、単に「安く済ませる」ことではなく、
自らの法的な立場と健康を危険にさらし、
世界中の犯罪と人権侵害に加担する行為であるという重い事実を、
私たちは認識する必要があると思います。
もし被害に遭ってしまったら:沖縄の相談窓口と行動ガイド
どれだけ注意していても、巧妙な手口に騙されてしまう可能性は
ゼロではありません。
万が一、偽ブランド品を購入してしまったり、
トラブルに巻き込まれたりした場合は、パニックにならず、
迅速かつ冷静に行動することが重要です。
沖縄県内には、あなたをサポートするための専門機関があります。
被害発覚後の応急処置:今すぐやるべきこと
偽サイトで商品を購入してしまった、
あるいは届いた商品が偽物だったと気づいた場合、以下の手順で行動してください。
- 金融機関へ連絡:
クレジットカードで支払った場合: すぐにカード会社に連絡し、事情を説明して支払いの停止(抗弁の申出)や不正利用の調査を依頼してください。 - 銀行振込の場合: 振り込んだ金融機関に連絡し、振込先の口座を凍結できないか
(組戻し手続きなど)相談してください。 - 商品の使用を中止: 届いた商品が化粧品、医薬品、電子機器などの場合は、
健康被害や事故の危険があるため、絶対に使用しないでください。 - 証拠の保全: 後の相談や手続きのために、以下の情報をすべて保存・保管してください。
- 偽サイトのURL、スクリーンショット
- 業者とのやり取りのメールやメッセージの全文
- 振込の控えやクレジットカードの利用明細
- 届いた商品の写真、梱包されていた箱や送り状
相談先一覧:あなたのための沖縄サポートネットワーク
一人で悩まず、専門家に相談することが解決への近道です。
沖縄県内には以下の相談窓口があります。
【消費生活に関する相談(契約トラブル、返金交渉など)】
- 沖縄県消費生活センター
- 相談専用ダイヤル(那覇本所): 098−863−9214
- 宮古分室: 0980−72−0199
- 八重山分室: 0980−82−1289
- ※メール相談も受け付けていますが、回答は電話で行われます 。
- 消費者ホットライン
- 電話番号: 188 (いやや!)
- ※お住まいの地域の消費生活相談窓口につながります。
【犯罪の疑いがある場合(詐欺、闇バイトなど)】
- 警察相談専用電話
- 電話番号: #9110
- ※事件や事故に至らない段階でも、犯罪に関する相談ができます。
- 最寄りの警察署
- 具体的な被害届の提出などについては、お近くの警察署にご相談ください。
【知的財産・輸入に関する情報提供】
- 沖縄地区税関 業務部 知的財産調査官
- 電話番号: 098−894−6706
- ※偽ブランド品の輸入に関する情報提供など。
【事業者向け・知的財産権者の相談窓口】
- 日本貿易振興機構(JETRO)沖縄貿易情報センター
- 海外での模倣品被害など、事業者の知的財産に関する相談を受け付けています。
- 東京本部 知的財産課: 03−3582−5198
- 政府模倣品・海賊版対策総合窓口
- 特許庁や経済産業省などが連携して対応する政府の公式窓口です。
トラブルに直面した際は、これらの窓口があなたの力になります。
ためらわずに、まずは電話をかけてみてください。
あなたの選択が、あなたと沖縄の未来を守る
沖縄に押し寄せる偽ブランド品の波は、単なる流行や経済問題ではありません。
それは、私たちの安全、健康、そして社会の公正さを脅かす、深刻な脅威です。
JMPコラムがお役に立てればと思いますが、
偽物を一つ手にするという選択は、想像以上に多くのリスクと結びついています。
その選択は、有害物質による健康被害や、予期せぬ事故を招くかもしれません。
知らなかったでは済まされない法的な責任を問われ、
あなたの人生設計を狂わせる可能性もあります。
そして、あなたが支払ったお金は、世界のどこかで子どもを搾取し、
さらなる犯罪を生み出す組織を潤す資金となり得るのです。
この問題は、税関や警察だけの戦いではありません。
私たち消費者一人ひとりが、賢明な番人となることが求められています。
ぜひご家族や友人と共有していただければと思います。
そして、日々の買い物で、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
その選択が、本当にあなた自身と、この美しい沖縄の未来のためになるのかを。
私たちの賢明な選択の一つひとつが、偽物の流入を防ぐ強固な防波堤となります。
安全で公正な社会は、私たち一人ひとりの手で築いていくものだと思います。