インド太平洋経済枠組み(IPEF)はご存知でしょうか?
まだ一般的には馴染みの薄い、インド太平洋経済枠組み(IPEF)ですが、バイデン大統領が2022年5月に日本を訪問した際に、東京でIPEFの立ち上げが発表されました。
アメリカが主導して提唱し発足しましたが、従来の関税引き下げを主な目的とした自由貿易協定とは異なり、以下のような分野での協力に重点が置かれています。
・貿易 : デジタル経済や労働、環境など、新たな貿易課題に対応するためのルール作り
・サプライチェーン : 強靭で途絶えにくいサプライチェーンの構築
・クリーン経済 : 脱炭素化に向けた協力やインフラ投資
・公正な経済 : 税制や腐敗防止に関する協力
これらの分野で協力を進めることで、参加国は持続可能で包摂的な経済成長を遂げ、地域全体の安定に貢献することを目指しています。また、参加国は上記4つの分野から関心のある分野を選んで交渉に参加する形式をとっており、すべての分野に参加する必要は無いとのことで、比較的緩やかな経済連携と言えるようです。
参加国 : 日本、アメリカ、インド、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、ブルネイ(当初13カ国、後にフィジーが参加し14カ国に)
現在、各分野において参加国間の交渉が進められています。具体的な内容はまだ確定していませんが、デジタル貿易の促進やサプライチェーンの強靭化、脱炭素化に向けた連携強化などが議論されていると見られます。
以下、外務省からの発信に詳しく説明がなされていますので参照ください。IPEFはまだ発展途上の枠組みですので、今後の動向をチェックしていく必要がありそうです。外務省や経済産業省のウェブサイトなどで最新の情報を確認することをお薦めします。
外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ipef.html
経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade/keizai-renkei-ipef.html
IPEFが日本経済に与える影響
IPEFは、日本経済にとって以下のような影響が考えられています。
・サプライチェーンの強靭化 : 部品供給の途絶リスクを減らし、安定的な生産活動を確保できます。
・デジタル貿易の促進 : 日本企業の海外展開を後押しし、新たなビジネスチャンスを創出する可能性があります。
・脱炭素化への貢献 : クリーン技術の開発や普及を通じて、日本の環境技術力を世界に示す機会となります。
存在感を増すインドとASEANの狙い
◉インドの狙い
インドがIPEFに参加した主な狙いには以下の考えがあるとされています。
・中国への対抗 : インドは、近年、経済的影響力を拡大する中国に対して、その影響力を均衡させたいと考えています。IPEFへの参加は、米国との関係を強化し、中国主導の経済圏に対抗するための重要な手段となります。
・サプライチェーンの多様化 : インドは、グローバルなサプライチェーンの多様化を図り、自国の製造業を強化したいと考えています。IPEFは、サプライチェーンのレジリエンス強化を目的としており、インドにとって魅力的な枠組みです。
・経済成長の加速 : インドは、経済成長を加速させ、世界における自国の地位を高めたいと考えています。IPEFへの参加は、投資の促進や技術移転を通じて、経済成長に貢献すると期待されています。
◉ASEAN諸国の狙い
ASEAN諸国がIPEFに参加した主な狙いには以下の考えがあるとされています。
・経済統合の深化 : ASEAN諸国は、域内の経済統合を深め、ASEAN共同体の構築を加速させたいと考えています。IPEFは、ASEANの経済統合を補完し、域内の経済成長を促進する機会を提供します。
・中国への依存からの脱却 : ASEAN諸国の中には、中国への経済依存度が高まっていることを懸念している国もあります。IPEFへの参加は、中国との関係を多様化し、経済リスクを分散させる手段となります。
・サプライチェーンの安定化 : ASEAN諸国は、グローバルなサプライチェーンの安定化を図り、自国の産業を保護したいと考えています。IPEFは、サプライチェーンの透明性向上や危機管理体制の構築を通じて、この目標達成に貢献します。
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2024年6月にはシンガポールで閣僚級会合が開催され、これまでの進捗状況が確認されたほか、今後の具体的な協力内容について議論されました。特に、クリーン経済分野における投資促進などが議論されたようです。
インド太平洋経済枠組み(IPEF)は参加国間の持続性のある経済成長を目指してデジタル経済、サプライチェーン、クリーンエネルギー、労働基準などの課題に取り組んでいます。
各国が柔軟に協力できる枠組みとして、参加国間の貿易や輸出機会が拡大し、新たな市場へのアクセスが促進される事が期待されています。
それぞれの国の様々な思惑や利害が絡む中、日本が世界に求められる役割と同時に経済安全保障にも関わる新たな連携として、このインド太平洋経済枠組み(IPEF)を、沖縄から世界を視野にする私たちJMPも注視して行きたいと考えています。